表題番号:2024C-217 日付:2025/03/03
研究課題オートファジーを基盤とした健康素材の開発およびその社会実装に関する基盤研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 人間科学部 教授 原 太一
研究成果概要
本研究は、細胞内成分のリサイクリングシステムであるオートファジーを活性化する甘酒の開発および社会実装に向けた課題を明らかにすることを目的として実施された。まず、既存の甘酒においてオートファジー活性化能を細胞実験により確認したが、一部の消費者から「味が苦手」という評価が得られたため、風味を改良した甘酒試作品を開発した。次に、異なる年齢層・属性の消費者を対象に改良甘酒の官能評価および購買意欲に関するアンケート調査を実施し、その結果、オートファジー活性化という三次機能(生体調節機能)の訴求は購買意欲に一定の効果をもたらす一方、二次機能(味・風味)が購買行動に最も強く影響を与える要因であることが判明した。消費者属性による差異としては、健康意識の高い層では機能性を重視して購買意向が高い傾向が見られたが、若年層では味や価格を機能性よりも優先する傾向があり、また中高年層では国産原料使用や安全性の担保に関心を示す傾向が確認された。さらに、詳細な科学的エビデンスの提示が購買行動の促進につながる可能性も示された。これらの結果から、オートファジー活性化甘酒の社会実装においては、機能性(三次機能)の訴求のみでは不十分であり、消費者の嗜好に合わせた味覚的満足(二次機能)および栄養価(一次機能)とのバランスが重要であることが明らかとなった。社会実装に向けては、単に三次機能のみに注力するのではなく、消費者の多様なニーズを考慮した人間科学的な視点に基づく商品設計が不可欠であり、今後はターゲット層別の製品展開やエビデンスの効果的な伝達方法の確立が課題となる。オートファジー活性化という革新的な機能性を持つ甘酒は、適切な商品設計と市場戦略に基づいた人間科学的複眼的視点からの研究開発より、消費者の健康増進に寄与する社会実装を促進する可能性が示唆された。