表題番号:2024C-216
日付:2025/04/03
研究課題社会的課題における身体・脳のインタラクション
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 人間科学学術院 人間科学部 | 教授 | 大須 理英子 |
(連携研究者) | 人間科学研究科 | 博士課程 | 大隈玲志 |
(連携研究者) | 人間科学学術院 | 助教 | 栗原勇人 |
(連携研究者) | 人間科学学術院 | 次席研究員 | 土屋彩茜 |
- 研究成果概要
- 人と人とがインタラクションするような社会的課題において、身体の活動や生体指標、脳の活動が個体間で同期する現象が知られている。本研究では、相手の意図や動きを相互に予測しあうことが脳活動の同期を生み出す起源となっているという仮説(相互予測仮説)を検証するため、相手の動きを正確に予測することが重要となるDual Ball-Catching Task課題を考案し、行動実験を実施した。課題では、二人のうちのどちらかが接近する一つのターゲットをキャッチする。両方が取りに行って衝突しても、両方がキャッチできなくても報酬を得ることができない。この課題に参加する2人をそれぞれ強化学習モデルの主体として位置付け、2人が行う協調行動をマルチエージェント強化学習モデルの枠組みで解釈することを試みた。15組の被験者ペアに250試行を行わせ、各自のQ値を更新しながら行動を最適化するモデルを構築し、学習率αと逆温度βを推定した。心理的距離が高いほどβが低く、行動がランダム化する傾向が確認された。また、βの和が大きいペアではボールを見合う回数が増え、βの差が大きいペアでは衝突数が増加した。これらの結果は、協調課題における意思決定パラメータが個人差と相互作用を通じて課題成績に影響を与えることを示唆する。相手との心理的距離が近いと感じている参加者ほど、行動選択がランダムになりやすいのは、「相手に任せても大丈夫だろう」という期待が働き、自らの行動選択を厳密に制御しなくなると解釈できる。逆温度βの和が低いペアほど落下回数が多いという結果は、協調課題において適切な役割分担が確立されないことが要因であると示唆される。Dual Ball-Catching Task課題と相互作用を考慮した強化学習モデルの組み合わせは「協調」の理解に有効であり、今後、脳活動計測に適用し、同期との関係を明らかにしていく予定である。