表題番号:2024C-206 日付:2026/04/04
研究課題「人間の塔(Castells)」を建てる所作の獲得過程に関するスポーツ人類学的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 人間科学部 教授 竹中 宏子
研究成果概要

 本研究の対象である「人間の塔(Castells)」とはスペイン・カタルーニャの伝統的な民俗文化であるが、人が立位の状態で積み上がり、高いもので10mにも達することから、それなりの技術の取得が求められている。報告者はこれまで、バルセロナの「サンツ(Castellers de Sants)」というチームで参与観察を基に、塔が高く複雑に積み上がる要因が技術的というよりは社会的要因が重要であることを明らかにし、また、人間の塔の特徴のひとつとして、初心者でも塔の一部になることができ、「誰でも必要とされる」特徴を指摘した(竹中宏子 2020「カタルーニャの人間の塔(Castells)を『支える』スタッフの活動と勧誘のシステムの民族誌チーム『サンツ』(Castellers de Sants)を事例に, pp.61-71, 『人間科学研究』第33巻第1号補遺号)。しかし、報告者の参与観察が進む中で、やはり技術の獲得は塔を建てる鍵であり、その過程における合同練習の場や個人的な努力の積み重ねに裏打ちされていることがわかってきた。

 そこで本研究では、本場カタルーニャの人間の塔チームを観察しつつ、日本で設立されたCastellers de Tokyoでも参与観察し、身体技術的な側面について細かく考察した。その結果、技術の獲得あるいは適性が必要とされる部分があることが明らかになり、人間の塔の「誰でも必要とされる」前提にはある種の「限界」や「条件」が含まれている点を提示できた。それは特に、Nucliと呼ばれる基層部分(pinya)の中心と柱部分(tronc)の部分である。Nucliは体格に拠るところが大きく、troncは上る技術に拠るものであり、幼い頃から人間の塔に関わってきた人が有利ではあるが努力も必要である。その為、特にtroncの担当者は特別な眼で見られている言動がフィールドで聞かれ、また、当の担当者もそれを期待している様相が見て取れた。こうした「特別な担当者」の存在と他のチームメイトとの関係性については次の課題としたい。