表題番号:2024C-199 日付:2025/03/03
研究課題日本における姓の読み方に関する探索的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 社会科学総合学術院 社会科学部 教授 笹原 宏之
研究成果概要
 日本の人々の姓(氏、名字、苗字)は、日本語の名詞の一角をなす重要な固有名詞でありながら、その方法上の困難さから、それが有する学術的な意義に比して研究が十分に開拓されてこなかった。そこで本研究では、この姓に対し、実証的な調査を実施するためにはどのような研究手法が有効であるのか、またそこで用いられている漢字を軸にすえた字種・字体・字音・字訓・文字列など各面からの分析はどのように行うとその実態が把握できるのかという問題について検討を行った。
 具体的には、主に姓の読み方について、種々の基盤となりうる調査を実施した。とくに文字の面から、「十」(つなし)の実在性、「小鳥遊」「月見里」などの熟字訓の方法の歴史性、「山崎」「中島」など連濁の有無を含む読み方の地域性など、姓とその使用漢字に関して、実態の捕捉を試行した。その結果、これらの解明には、やはりまずは大規模かつ多角的な調査が必要であり、また個々の実状と背景まで探るためには各分野の先行研究に対する十分な確認(批判的な選別を含む)と、緻密な文献調査(同)などの実施も必要であることが具体的に確かめられた。
 そしてこうした研究が生みだす成果は、学術諸分野のみならず、戸籍や住民登録に関連する政策やデジタル行政全般の抱える諸課題、さらに一般の姓に対する意識に対しても波及効果をもたらすことも確認できた。