表題番号:2024C-196 日付:2025/03/29
研究課題カーボンニュートラル社会の産業連関分析に向けて
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 社会科学総合学術院 社会科学部 教授 鷲津 明由
研究成果概要

 カーボンニュートラル(CN)社会の実現にむけての、様々な施策を評価するための重要なツールとして,総務省が20246月末に公表した産業連関表に基づく2020年版エネルギー社会技術分析用産業連関表(ESTR-IO)(暫定版)の作成を実施した。

2020年版ESTR-IOでは,以下の2種類の表を作成予定である。

(1)2020年版ESTR-IO・組込表:2020年の再エネ導入実態を反映した表

(2)2020年版ESTR-IO2040年想定表:電力需給量は2020年表と同じであるが,再エネ導入比率とその内訳が第7次エネルギー基本計画における2040年の比率と仮定した表

このうち,2024年度は2020年版ESTR-IO・組込表(暫定版)の作成を行った。2024年度に作成する表が「暫定版」となるのは以下の理由による。すなわち,発電設備・施設建設部門のアクティビティ作成には,国土交通省による建設部門分析用産業連関表の2020年版の公表を待つ必要がある

2020ESTR-IOの特徴は,再エネの種類ごとに競争電源と地域活用電源の役割分担が明確化しつつある現状を踏まえていることと,送配電部門を「再エネ賦課金を徴収し,固定価格買取制度(FIT)の買取価格を通じて,それを再配分するという,エネルギーマネジメント機能を持つ部門」と定義していることである。

以前のIONGESでは,生産者価格で評価された電力の価額とFIT買取価格で評価された電力の価額の差額(FITとの差額)を「補助金」として,外生の付加価値部門に負の値で組み入れてきた。2020ESTR-IOでは,FITとの差額を,送配電部門(=エネルギーマネジメント部門)のエネルギーマネジメント機能の生産物として,内生部門で表章し,その経済効果の分析を明確化しようとした。ここで,FITとの差額の財源は再エネ賦課金である。したがって,このようにすることで,以前のIONGESでは,明確に表章してこなかった再エネ賦課金が,2020ESTR-IOでは内生的に明示され,その経済効果を明確に分析できるようになる。