表題番号:2024C-192
日付:2025/04/01
研究課題環境災害・自然災害における保険制度を用いる合理性-保険制度の限界と将来への展望-
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 社会科学総合学術院 社会科学部 | 助手 | 吉田 朗 |
- 研究成果概要
- 本研究では、「環境災害・自然災害における保険制度を用いる合理性-保険制度の限界と将来への展望-」タイトルとして研究を実施した。
原子力災害分野において国会議事録を用いて「原子力損害賠償支援機構法(現:原子力損害賠償・廃炉等支援機構法)」において一般負担金の制度理解が進めなかった原因を明らかにした。国会議事録によると、一般負担金の中核をなす「事故当事者以外の原子力事業者が金銭負担をする」の部分で議論が止まってしまったことが読み取れた。その結果、一般負担金への理解(制度に関する構造としての理解)が進まず表面的な議論だけになってしまった。一般負担金の議論で見られた問題は、今後に大きな示唆を与える。リスクある行為が実行される前にリスクが認識する制度を作ることが求められている。
次に「地震保険」に関してである。こちらは昨年の研究を継続(地震保険に関する法律(国の再保険)に関する国会議事録を検証)した。当初は、地震だけではなく災害全体を意識した制度設計を計画していたが、その後の議論で地震に限定をしたうえで制度が設計されるにいたった。地震に限定したことは重要な示唆を生んだ。重要な示唆とは、地震保険に関する法律に「たすけあい」の考え方が内包されていたことである。「たすけあい」とは、共済分野で用いられる考え方である。「最後のひとりまで」の考え方が中核にある。そして、「たすけあい」で重要なのは限度の意識である。
最後に「農作物共済」に関する研究である。「農作物共済」の加入から義務から任意に転換した「農業保険法」に関する国会議事録を検証した。国会議事録によると、<任意加入制に移行する理由が問われる場面はあった>、<政府よりは明確な回答を示されていない>ことが明らかになった。任意加入制に移行する合理的な理由が議事録からは見当たらなかった。