表題番号:2024C-185 日付:2025/04/04
研究課題深層学習によるHER2ーSISH細胞画像分類に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 大学院情報生産システム研究科 教授 鎌田 清一郎
研究成果概要
WHOによれば2022年乳癌により約67万人の命が失われたという報告がある。HER2 (Human Epidermal growth factor Receptor 2) は乳癌の進行度に関わる糖タンパクで、細胞表面に存在する。また病理レポートにはHER2の結果が記載されており、HER2は患者の進行度を測る上で重要な役割を担っている。本研究では、まずIHC病理検査によるスライドガラス標本の全体画像 (Whole Slide Imaging, WSI)を利用して、癌の進行度として陰性(0または1+)、境界要検査(2+)、陽性(3+)の4段階に分ける高精度な分類手法Integrated Segmentation and Classification modelとしてISCAS-Netを新たに構築した。深層学習モデルには畳込ニューラルネットワーク(CNN)をベースラインとして用い、ロバスト性を向上させるために、臨床データで見られる自然な変動をシミュレートし、異なる染色条件や画像診断装置間でのモデルの汎化能力を向上させた。評価実験では、マレーシア・マルチメディア大学において公開されているサンプルから得られた95枚のIHC染色のWSI画像を利用し、パッチレベルでは、95.77%の分類精度と83.09%F1スコアを達成した。次に、本研究は、胸部乳癌スクリーニングを行った後の治療法を支援するため、HER2タンパクによるSISH染色法を利用した新たなバイオマーカに着目し、深層学習によるHER2-SISH細胞画像分類を検討した。American National Cancer InstituteによるHER2/CEP17比の基準(1.8以下であれば陰性、1.82.0の場合境界要検査、2.0以上であれば陽性)に基づいて前述のCNNベースモデルを改良した。モデル検証のために、マレーシア・マルチメディア大学において公開されているHER2-SISHデータセットを用いた。これは20種類のSISH画像があり、100カ所のROI領域が含まれたものである。HER2/CEP17比による病理診断医が作成したアノテーションデータを利用し、従来手法との評価実験の結果、新たに開発したモデルは従来手法に対して平均比率誤差が約30%減少したことを確認した。