表題番号:2024C-175
日付:2025/04/03
研究課題異種細胞を組み合わせて構築した複合化生体組織の構造・機能解析
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 理工学術院 先進理工学部 | 教授 | 武田 直也 |
- 研究成果概要
腸は多様な異種細胞から構成されている、最上層の粘膜上皮に存在する腸管上皮細胞に加えて、粘膜固有層の免疫細胞や粘膜下組織の血管(血管内皮細胞)、さらに粘膜筋板や筋層の筋組織などが存在する。さらに、粘液層は腸内細菌の住処である。独自に開発した細胞培養システムを用いて腸管上皮細胞を培養すると共に、これら他種の細胞を組み合わせて複合的な腸の組織モデルの構築を推進した。開発した培養システムの一つは、紙の培養液保持層(下層)とマイクロファイバーからなる細胞接着層(上層)を合わせた二層培養基材である。この二層培養基材で腸管上皮細胞株Caco-2を培養すると、絨毛突起様構造を形成し豊富な粘液を産生する機能を示す腸組織モデルが構築された。続いて、生体組織と同様の位置関係で腸管上皮とこれとは異なる細胞種(細胞A)を保持できるように培養方法を工夫して培養条件を最適化したところ、腸上皮モデル組織と細胞Aの共培養を達成した。二層培養基材とは異なる培養システムを用いてCaco-2細胞を培養したところ、ここでも腸組織モデルが構築された。そこで、新たな細胞種(細胞B)と混合して播種し適切な条件において培養をしたところ、共培養が達成された。さらに、Caco-2は集合して腸組織モデルを形成した。細胞Bは生体同様の機能を有していることも確認した。異種の細胞種を単純に混合して播種するだけで、同種の細胞同士が集合して組織を形成する現象はオルガノイドなどでも見られる。本研究の培養システムと組織モデルも、生体に近いより高度な構造と機能を持った生体組織を構築できる系として、再生医療等への応用が期待される。