表題番号:2024C-174 日付:2025/02/26
研究課題属の異なる亜硝酸酸化細菌の酸化ストレス耐性の比較
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 先進理工学部 教授 常田 聡
研究成果概要
亜硝酸酸化細菌は難培養微生物といわれているが、Candidatus Nitrotogaはその中でも特に分離培養に時間を要した。分離の過程では過酸化水素を分解するピルビン酸やカタラーゼが必要であったことから、Ca. Nitrotogaの培養の難しさの一つとして酸化ストレスを受けやすいことが考えられた。本研究では、淡水域で主要な亜硝酸酸化細菌であるNitrobacter sp. NbAS、Nitrospira japonica NJ1と比較しながらCa. Nitrotoga sp. AM1Pの増殖特性を明らかにすることで、窒素循環において重要な役割を果たす亜硝酸酸化細菌へのより深い理解を目指した。まず、異なる菌体密度で培養し、カタラーゼを添加したときの亜硝酸消費への影響を比較した。その結果、NbASとNJ1の10^5 cells/mL、AM1Pの10^5、10^3 cells/mLではカタラーゼ添加の有無に関わらず2週間で亜硝酸を完全に消費した。その他の条件ではカタラーゼ非添加系よりもカタラーゼ添加系で亜硝酸が消費されたウェルの割合は高く、亜硝酸酸化の促進が見られた。特に10^1 cells/mLの2週間後におけるカタラーゼ添加効果の大きさはAM1P、NJ1、NbASの順に大きいことがわかった。次に、濃度の異なる過酸化水素を添加して過酸化水素耐性を評価した。その結果、NbASおよびNJ1では10 µM以下の過酸化水素濃度で亜硝酸が消費され、その濃度条件で過酸化水素が分解された。一方、AM1Pでは10 µM以下の過酸化水素濃度で3日以内に亜硝酸が消費され、50 µMの過酸化水素濃度では約5日で消費した。以上の結果から、NbAS、NJ1、AM1Pの亜硝酸酸化が阻害されない過酸化水素濃度は同程度であると結論づけられた。