表題番号:2024C-172
日付:2025/04/02
研究課題溶解度の化学に基づくレドックスフロー電池用の高性能電解液の開発
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 理工学術院 先進理工学部 | 講師 | 岡澤 厚 |
(連携研究者) | 理工学術院 先進理工学部 | 教授 | 大久保將史 |
- 研究成果概要
近年の電力系統において、間欠性発電である再生可能エネルギーの導入比率が増加するに伴い、エネルギー需要の負荷平準化を目的とした大規模蓄電システムが注目されている。その候補のひとつがレドックスフロー電池であるが、実用化されているバナジウム系電池では、活物質としてのレアメタルの使用が課題となっている。資源豊富な鉄系金属錯体や有機物を用いた活物質の開発も進んでいるが、バナジウム系の2 mol/Lに匹敵する溶解度を持ち、かつ安定で安価な活物質の有力な候補がないのが現状である。そこで、本研究では(1)活物質の多成分化による溶解度向上、(2) 濃厚水溶液の疎水化による疎水性活物質の利用、(3)側鎖置換基導入による活物質の安定化、(4)8配位キレート鉄錯体によるサイクル特性の向上について研究を推進した。
非水系レドックスフロー電池用の正極液活物質の候補として、約1 V (vs. SHE)程度の貴な酸化還元電位を有するターピリジン鉄錯体に着目した。(1)として、分子の非対称化および活物質混合の組み合わせによる、電解液の「多成分化」手法によって元の対称錯体の溶解度の2倍以上溶ける錯体溶液を調製することに成功した。電極液の高エネルギー密度化に対する重要な分子設計指針を示すことができた。また、(2)では高濃度LiTFSI水溶液を用いることで、純水に難溶の疎水性活物質を2 mol/Lを優に超す濃度で溶解させることに成功した。溶ける分子の傾向として対称性が関係している可能性があり、さらに分子論的な解明を目指す。