表題番号:2024C-171 日付:2025/02/10
研究課題液滴における自己複製分子システムの進化
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 先進理工学部 講師 水内 良
研究成果概要

生命が誕生する前にはRNAなどの自己複製する分子システムが存在し、ダーウィン進化によって複雑化したと考えられている。進化には細胞等の区画構造が必要であり、原始区画の候補として液-液相分離した液滴が提唱されている。一方、先行研究において自己複製分子の進化は油中水滴でしか実証されていない。そこで本研究では申請者らが開発した進化可能なRNA自己複製システム (Mizuuchi 2022) を液滴 (Mizuuchi 2020) で進化させられるかを検証した。一連の実験サイクル (RNA複製、希釈、栄養供給) を繰り返した結果、液滴がない場合はすぐに寄生的なRNAが出現してRNA複製が停止したが、液滴の存在下では約80世代までの複製が起きた。長期複製したRNA集団の配列組成を解析したところ、突然変異を蓄積し、異なる変異をもつ複数種類のRNAに分化していた。それらのRNAは祖先型のRNAよりもよく複製し、適応進化が起きていた。以上より、液滴のRNA進化における有効性が明らかになった。一方で、RNA複製は約80世代までしか続かず、それ以降の複製が停止した原因は明らかでない。現在、より長期的にRNAが複製し、進化可能な継代条件を模索している段階である。