表題番号:2024C-167 日付:2025/03/26
研究課題細胞-組織融合モデルの提案のための数理解析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 先進理工学部 教授 高松 敦子
研究成果概要
上皮組織は傷つけられると、傷境界の細胞の運動性が活発化することで、傷を埋める。本研究の最終ゴールは、この創傷治癒という現象にを説明するできるだけ単純な数理モデルの構築することである。そのために、広く普及しているVertexモデルと、我々が開発した粒子-ファイバー(PF)モデルの融合を目指す。どちらのモデルも、細胞を粒子と辺で表し、粒子についての運動方程式を解くことで組織・細胞の変形と運動を記述する。前者は、静的な組織の記述に向いているが、創傷治癒のような動的な細胞の記述は不得手である。一方、後者は動きまわる1細胞の記述のために開発されてきた。従って、両モデルを融合することで両者の利点を持つ数理モデルになることが期待される。昨年度までは、PFモデルをVertexモデル形式に置き換え、細胞の形態が対称形である場合に限って、モデルの安定性解析を行ってきた。今年度は、モデルで得られた結果を検証するために、実験観測を進めた。MDCKという上皮細胞を用いて、傷境界の細胞の振る舞いについて観察を行った。境界細胞を率いるリーダーセル様細胞の運動と周囲細胞の運動の関係について解析する系を構築した。さらに細胞が接着できる領域を、ストライプ状および円形、三角形、四角形に設定し、その付近での細胞の運動を観察した。ストライプ 状の領域では、細胞はその境界に沿った運動を行う頻度が高いことを確認した。また、円形、三角形、四角形の限定領域では1〜3細胞集団が間欠的な回転運動を行うことが確認できた。これらの非対称的な運動について、今後は前年度までに開発したPFモデル、または、Vertex型のPFモデルで再現可能か検討する予定である。