研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 理工学術院 先進理工学部 | 教授 | 井村 考平 |
- 研究成果概要
ペロブストカイロマイクロ結晶は,ファブリペロー共鳴やウィスパリングギャラリーモードにより,光を結晶内部に閉じ込め,光学特性を変調する。特に,光の閉じ込め効果が強くなるとき,マイクロ結晶に励起されるエキシトンと光場が相互作用し,あらたな電子状態を生成する。本研究では,顕微分光計測により,ペロブストカイロマイクロ結晶における強結合状態を解明することを目的とした。
化学気相成長法により,CsPbBr3マイクロ結晶を石英やサファイア基板上に合成した。また,気相イオン交換反応によりCsPbI3マイクロ結晶を合成した。試料の形状は,走査型電子顕微鏡により評価した。試料の光学特性は,光学顕微鏡により単一粒子レベルで評価した。発光の励起には,連続発振レーザー(375 nm)とパルスレーザー(400 nm)を用いた。
試料からの発光スペクトルを計測した結果,CsPbBr3マイクロ結晶では波長520 nm近傍に,CsPbI3マイクロ結晶では波長700 nm近傍にエキシトンからの発光が観測された。また,いくつかの結晶において,エキシトンからの発光に微細な周期的ピークが重畳して観測されることが明らかとなった。これらのピーク構造は,キャビティー効果により生じている可能性がある。光閉じ込め効果をさらに高め強結合状態を実現するために,マイクロ結晶上にスペーサを成膜したのちに金薄膜を蒸着し,ハイブリット体を作製した。バイブリット体の発光特性を評価した結果,金薄膜の蒸着前後で,発光強度が減少することが明らかとなった。これは,励起状態のエネルギーが金薄膜に移動していることを示唆する。金薄膜とマイクロ結晶の間のスペーサ厚みを最適化することで,このエネルギー移動を抑制し,プラズモンによる光閉じ込め効果を活用すること,これにより強結合状態が実現すると期待される。