表題番号:2024C-162 日付:2025/11/01
研究課題ビピリミジンを構成要素とする電気伝導性配位高分子合成と応用
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 先進理工学部 教授 山口 正
研究成果概要

酸化還元活性な架橋配位子と酸化還元活性な金属イオンから構成される配位高分子は,金属-配位子間および配位子−配位子間の相互作用系が広がった巨大な共役系が構築でき,電気伝導性が期待できる。本研究では架橋配位子としてビピリミジン(bpym)を,金属イオンとしてCu+イオンを用いた配位高分子の合成とその伝導性についての研究を行なった。[Cu(CH3CN)4][PF6]のジクロロメタン溶液とビピリミジンのベンゼン溶液の混合により黒色の配位高分子[Cu(bpym)](PF6)を得た。単結晶X線構造解析によりCu+bpymが交互に並んだ一次元鎖構造であることが分かった。Cu-N距離は2.011-2.048ÅCu-Cu距離は5.423ÅCu周りは歪んだ四面体構造をとっており,隣接するbpym面のなす二面角は72.04°であった。また,鎖間にはπ-π相互作用などは見られず,独立した一次元の伝導性を示すことが期待された。粉末試料の拡散反射スペクトルの立ち上がり波長からバンドギャップが約1.6 eVであると見積もられた。ペレット状に成型した粉末試料の電気伝導度は 3×10-9 S/cmであり,わずかながら電気伝導を示した。ガラス基板を両溶液に交互に浸漬させて配位高分子の薄膜を作成した。薄膜の反射スペクトルやXRDから粉末試料と同じ構造の配位高分子が作成されていることがわかった。FTO基板上に薄膜を作成し,その上に金電極を蒸着し電気伝導度を測定したところ粉末試料より約3桁大きい7×10-6 S/cmであった。FTO基板上の薄膜の電気化学測定において,酸化側および還元側の立ち上がりがそれぞれ+0.3 V, +1.7 V (vs SCE)に観測された。その差の1.4 Vが反射スペクトルから求まったバンドギャップと同程度であることから,これらが価電子帯上端および伝導体下端に対応すると考えられる。