表題番号:2024C-161 日付:2025/04/21
研究課題アルキンに対するヒドロ官能基化による軸不斉のエナンチオ選択的創製
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 先進理工学部 教授 柴田 高範
研究成果概要

報告者は、軸不斉を有する1,8-ジアリールナフタレンの初めての触媒的かつエナンチオ選択的合成法を報告した。これまで光学活性な1,8-ジアリールナフタレンの合成法は、光学分割による手法が一例のみであった。一方、報告者はロジウム触媒とキラル配位子(特にXylBINAP)を用いた[2+2+2]付加環化反応により、高収率かつ高エナンチオ選択性での合成に成功した。本反応では、ナフタレンのペリ位にアルキニル基とアリール基を有する原料、すなわち1-アルキニル-8-アリールナフタレンと1,6-ジインとの分子間環化反応により、さまざまな置換基を有する基質に適用可能であった。反応条件の最適化では、温度、、触媒前駆体や配位子の選択が重要であり、特に、ジインを反応系に滴下することが高い収率の達成において必須であった。また、エステル基を含むアルキンは、触媒との配位により反応性と選択性に大きく寄与することがわかった。反応後に得られた生成物のX線結晶構造解析により、その絶対配置(S体)も確認され、加熱してもラセミ化が観測されず、熱的に安定性が確認された。

さらに、光学的特性の評価では、ピレン基を有する生成物が高い蛍光量子収率(最大Φ=0.89)および円偏光発光(CPL)特性(|glum| 最大1.6×10⁻³)を示し、キラル発光材料への応用可能性が示唆された。従って本手法は、エナンチオ選択的不斉合成によって高機能性を備えた軸不斉分子を創出できる点で意義深く、今後、光学材料や不斉触媒設計への応用が期待される。