研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 理工学術院 先進理工学部 | 教授 | 中田 雅久 |
(連携研究者) | 先進理工学研究科化学・生命化学専攻 | 修士課程学生 | 伊藤隆之介 |
- 研究成果概要
これまでにN-(2-ヨードフェニル)-N-メチルメタクリルアミドと酢酸チオフェニルを一酸化炭素雰囲気下で炭酸セシウム存在下、Pd触媒を用いてトルエン中100℃で反応させるとS-フェニル 2-(1,3-ジメチルインドリン-3-イル)エタンチオエートが収率96%で得られるチオカルボニレーションを見出している。本反応は第四級炭素とチオエステルを連続的に形成する環化反応である。そこで本反応の基質適用範囲を探るとともに収率80%、80% eeで生成物を得ることを目標に不斉触媒反応を検討した。
今回見出したチオカルボニレーションにおいては、反応性の高いチオエステルが生成物構造中に存在するため、試薬としてのチオエステルの選択と反応のワークアップが高収率のために重要であることが分かった。開発した反応により、ベンジル位にキラルな4級炭素を持つクロマン、クマラン、インドリン、オキシインドール誘導体が高収率で得られた。これまでに報告したTIPSSPhを用いた反応と比較すると、チオエステルを用いた場合の収率は、ほぼ同等かそれ以上である。さらに、チオエステルを使用すると、反応時間が1時間未満に大幅に短縮される。したがって、酢酸チオフェニルは反応時間、原子経済性、費用対効果の点でTIPSSPhより有利である。この反応は四級炭素の形成を伴う他の縮合環系の構築にも応用可能であり、現在研究中である。さらに、様々な不斉配位子を用いた不斉触媒化を検討した結果、最大80% eeの生成物を収率78%で得ることに成功した。さらに、2-ヨードアニリンから7工程でフォリカンチンの合成中間体を与える環化基質を合成することに成功した。この基質の触媒的不斉チオカルボニル化反応においては、二方向伸長型の不斉触媒反応となるため、統計学的に高い光学純度の生成物が得られると期待できるので、反応条件の検討を行っている。