表題番号:2024C-159 日付:2025/04/16
研究課題歪んだシクロファジインを基質とする無触媒クリック反応の開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 先進理工学部 教授 鹿又 宣弘
研究成果概要

架橋鎖に連続するアセチレン部位を有するシクロファジインは,顕著に歪んだ構造であることが知られており,その独特な構造により興味深い反応性が期待される.一方で,連続したジインを二箇所に含む環状アルキンとアジドとの環化付加反応が報告されているが,シクロファジインを無触媒のクリック反応に応用した例はこれまでにない.本研究では,架橋鎖に連続したアセチレン部位を有するシクロファジインの分子歪みを利用し,無触媒クリック反応の可能性を探ることを目的として研究を実施した.

まず,10炭素の架橋鎖を有する[10]パラシクロファジイン1を用い,ベンジルアジドとの環化付加反応を試みた.加熱条件下では,1対1の環化付加体であるトリアゾール2が得られたが,室温では生成が確認されなかった.次に,8炭素架橋鎖を有する[8]パラシクロファジイン3を用いてフェニルアジドとの反応を行ったところ,室温でも良好に反応が進行し,1対1の環化付加体であるトリアゾール4が位置選択的かつ定量的に得られた.この結果は,シクロファジイン3が室温でも高い反応性を示すことを示しており,その分子歪みが反応性の向上に寄与していることが明らかとなった.これにより,シクロファジイン3が歪み促進型アジド-アルキン環化付加反応において優れた基質となることが証明された.

これらの成果は,シクロファジインが無触媒かつ温和な条件下でのクリック反応に利用できることを初めて示したものである.シクロファジインの特異な分子歪みが化学反応性に大きく影響を与えることを実証しており,新たな合成化学の手法としてシクロファジインの応用のみならず,シクロファン架橋鎖の分子歪みを利用した新たな反応設計の指針となることが期待される.