表題番号:2024C-157
日付:2025/03/17
研究課題max-plus 振動子系における同期現象の解析
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
---|---|---|---|
(代表者) | 理工学術院 先進理工学部 | 教授 | 山崎 義弘 |
- 研究成果概要
- (1) ホップ分岐によるリミットサイクルを持つモデルとして、Sel’kovモデルにトロピカル差分化を適用すると、時間刻みのパラメータτを導入した離散的な式が得られる。さらに、超離散化を行うことでmax-plus 方程式を導出した。我々はこのmax-plus 方程式の解として7状態からなる超離散リミットサイクルが存在することを明らかにしてきた。この結果は、元のSel’kovモデルが有していたリミットサイクルがmax-plus 方程式においても超離散化された形で保持されていることを示している。また、上記のmax-plus 方程式を一般化した拡張モデルに着目し、その動力学的性質を調べた。また、ポアンカレ写像に基づく相平面解析により、超離散リミットサイクルを構成する離散状態数と、モデルに含まれるパラメータとの一般的な関係を明らかにした。(2) トロピカル差分化された Sel’kov モデルに注目し、τを分岐パラメータとした系の状態変化を調べた。まず、離散リミットサイクルの状態に対して位相θを導入し、そのτ依存性を解析した。その結果、式(b)の分岐図を得た。この分岐図に基づいて、τ > τ* の領域でリミットサイクルが超離散状態となることを確認した。次に、トロピカル差分化された Sel’kov モデルの7 回反復写像に対する固定点として得た位相θをτの関数とみなして行った解析から、リミットサイクルには安定なもの(青)と不安定なもの(赤)がペアで存在することを発見した。これは、τ = τ* でサドルノード分岐が生じることを意味し、超離散状態はこのサドルノード分岐によって位相がロックされた状態であると結論づけられた。さらに、超離散化で得られたmax-plus 方程式が元のトロピカル差分化された離散的なモデルと同じ動力学的構造を持つことを示した。(3) 以上の発展として、1次元的に結合した超離散リミットサイクル振動子列に位相波が伝わることを発見し、いくつかの解析を行った。