表題番号:2024C-155 日付:2025/04/01
研究課題アメーバ模倣型組み合わせ最適化マシンの研究:デバイス実装から応用例探索まで
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 先進理工学部 助手 宮島 悠輔
研究成果概要
この研究課題について、アメーバ生物である粘菌の生存戦略に倣った組合せ最適化マシンの実現に向けた理論研究を行った。本来は、(1)アメーバ模倣型組合せ最適化マシンのデバイス実装を理論的に提案すること、(2)そのマシンの有力な応用例を見つけることの2つを目的として研究する予定だった。しかし、昨年の成果をまとめた論文について、5月ごろに受け取った査読コメントに基づき、研究計画を一部変更することにした。数理モデルの観点から、より物理的実装に寄り添った研究を行う必要性を感じたためである。これまでの研究で、20都市巡回セールスマン問題を対象として、モデルの解探索性能を向上させる3つの変更を見つけ出したが、(1)これらの変更による性能向上の傾向がより大きな都市数に対して成り立つのか、(2)なぜこれら3つの変更が性能向上に寄与するのかをもう少し詳しく調べることにした。前者については、元のモデルおよびそこに変更を施したモデルによって20から100都市の問題を解いた。後者については、光照射がされていない溝の数を表す変数や粘菌の足の長さを表す変数などのダイナミクスに注目して、どのようなプロセスを経てモデルが解探索を行っているか調べた。さらに、これまでの研究で構築したAmoeba TSP漸化式に対して、そこに含まれているパラメータと求解性能の関係性を調べた。こういった網羅的な研究は単純ではありながらも、実験家にとって最適化マシンの設計指針のヒントになると期待される。上記の研究の結果、各変更による解探索性能の向上は大きな都市数に対しても成り立つ普遍的なものであることがわかった。また、なぜ変更によって性能が向上するのか理由を解明することができた。今年度は、論文1編をNonlinear Theory and Its Applications誌に発表した。3件の国際会議の発表、3件の国内学会の発表を行った。