研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
---|---|---|---|
(代表者) | 理工学術院 先進理工学部 | 教授 | 望月 維人 |
- 研究成果概要
光照射が誘起する光誘起相転移現象は、非摩耗性、応答の高速性、省電力性から基礎物理学と技術応用の両方の観点から興味を集めている。しかし、光磁場と磁化とのカップリングのエネルギースケールは非常に小さいため、光による磁性制御やスイッチングの実現は容易ではない。一方で、光電場と電荷のカップリングはエネルギースケールで2,3桁強いため、ある種の物質中で実現する磁性と電荷の強い結合を活用することで効率的な光による磁性制御が実現できる可能性がある。そのため、近藤格子磁性体や磁性強誘電体(マルチフェロイックス)、ラシュバスピン軌道相互作用系における光誘起磁気現象の理論的開拓と研究に取りくんだ。まず、B20型キラル金属磁性体の理論モデルである3次元近藤格子磁性体中において、磁化が構成する創発磁気モノポール格子に光やマイクロ波を照射した時の磁化と電荷の複合共鳴励起を調べた。その結果、モノポールとアンチモノポールを結ぶディラック弦の並進モードを発見した。さらに、磁場印加により2種類のディラック弦の片方が対消滅を起こしてなくなると、対応する共鳴モードが消失すること見出した。本成果により、磁気モノポールの理解に向けた物性物理学と素粒子物理学を横断する研究の進展が期待される。また、技術応用としてもナノサイズの発電素子や光やマイクロ波を電気信号や電圧に変換する素子への応用、新しい光/マイクロ波素子機能の開拓などの研究・開発の促進が期待される。本成果をアメリカ物理学会の論文誌Physical Review Letters誌に発表した。さらに、国内誌「固体物理」に日本語解説記事、東京大学物性研究所スパコンセンター成果報告書に解説論文(招待)を執筆し、プレスリリース(国内・米国)を発表した。また、本成果以外にも「三角格子スピン電荷結合系における光誘起マルチフロケチャーン絶縁体相の発現を理論的に予言し、アメリカ物理学会の論文誌Physical Review B誌に発表した。