表題番号:2024C-152
日付:2025/03/30
研究課題2次元マイクロキャビティレーザーの複雑動力学に関する研究
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 理工学術院 先進理工学部 | 教授 | 原山 卓久 |
- 研究成果概要
- 様々な2次元形状の微小光共振器を用いたレーザーは、2次元マイクロキャビティレーザー、変形キャビティレーザー、あるいはカオティックビリヤードレーザーとよばれている。このようなレーザーは、1980年代から始まったビリヤード光線モデルによる光線カオスと量子・波動カオスの数理物理学的研究の蓄積と半導体微細加工技術の発展とが融合することによって、1990年代後半から理論・実験の両側面から盛んに研究されるようになった。従来の量子カオス研究における非線形性とは、量子力学ではなく、対応する古典力学系にある。これに対して、本研究課題では、レーザー媒質を外部からエネルギーを注入された量子系として扱うことで、キャビティ内部で光場の共鳴波動関数間に非線形な相互作用を取り入れた理論的アプローチによって研究を進めた。つまり、本研究課題では、光線カオスを生じるキャビティ形状の非線形性に加えて、レーザー媒質を介した共鳴波動関数間の相互作用という非線形性も考慮した。その結果、完全カオス系となるキャビティ形状の2次元レーザーでは、すべての共鳴波動関数が量子エルゴード性を持つため、共鳴波動関数の強度パターンの重なりが非常に大きく、キャビティ内部でレーザー媒質が一様分布している場合、波動関数がレーザー媒質を通じて外部から注入されるエネルギーを獲得するには、1つの共鳴波動関数だけがレーザー発振状態となることが効率がよく、従来の量子・波動カオス研究の枠組みを越えた、波動カオスとレーザー媒質の2重の非線形性が、従来の量子・波動カオスの普遍則とは異なる普遍的単一モード発振という新しい普遍則をもたらすことを解明した。さらに、選択励起の場合には共鳴波動関数たちが協力し周期軌道上に局在する発振状態を自己組織的に形成することを明らかにした。