表題番号:2024C-151 日付:2025/03/09
研究課題昆虫の翅構造の再現と飛翔ロボットへの応用
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 先進理工学部 教授 澤田 秀之
(連携研究者) 応用物理学科 助手 Renke Liu
(連携研究者) 応用物理学科 助手 五十嵐 治雄
研究成果概要

 本研究では、昆虫の身体構造と飛翔形態を全て機械的に再現、再構築することにより、新しい昆虫型飛翔ロボットの研究開発をおこなった。昆虫の飛翔形態や飛翔方法は、およそ110万種といわれる膨大な種によって多様なものとなっており、その機序は未だほとんど解明されていない。ここでは特に、直接飛翔筋および関節飛翔筋による羽ばたき方法を参考とし、申請者らが研究を進めている形状記憶合金(SMA)ワイヤを用いたアクチュエータを用いて微小筋肉の高速伸縮動作を再現し、翅を羽ばたくことで飛翔を実現することを目的とした。

 本年度は、A. R. Ennos1987年に提唱した羽ばたき構造のモデルを基に、その再現を行った。再現モデルでは、外骨格と翅基部を個別にPLAフィラメントを用いて3Dプリントし、それらを金属ピンで接続することでヒンジ構造を再現した。また、背腹筋による駆動をSMAアクチュエータで再現し、背縦走筋による逆方向の駆動はモデル自体の弾性を利用して再現した。翅は、外骨格と同様のPLAフィラメントで3Dプリントした翅脈に、PETフィルムを貼り付けて作製した。SMAワイヤにパルス電流を流すことで、通電加熱と自然放熱により羽ばたき動作を再現させた。動作の様子は、動作部分に光学マーカを貼付し、高速度カメラを用いて1000fpsで撮影した動画をトラッキング解析することで記録し、羽ばたきの変位やモデルおよび翅の変形を計測した。また、感圧センサを用いてモデル各部に加わる圧力を測定し、羽ばたき動作と翅の挙動を考察した。

 SMAワイヤの収縮により胸部外骨格が歪み、その結果、モデルと同様の翅の羽ばたきが観測された。羽ばたきの変位角度は約34度に達した。外骨格の変形をEnnosのモデルと比較すると、特徴である振り上げ時のLateral scutumの内側への変形が再現されていることも確認できた。