表題番号:2024C-148 日付:2025/03/24
研究課題液液界面を結晶場とする新規晶析法の開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 先進理工学部 講師 小堀 深
研究成果概要
 近年、アミノ酸はその生理機能だけでなく特異的な化学構造や反応性にも着目されることで、食品や医薬品など多岐にわたる製品として活用されている。しかし、アミノ酸は分子構造が複雑なため、溶液から結晶化する際の挙動が不安定である。この課題を解決するために、アミノ酸を効率よく安定して液中から得るための新規な晶析法が活発に研究されている。本研究はアミノ酸のイオンを含む溶液に電流を加え、電気泳動により晶析環境場まで移動させ濃縮することで結晶化を促進させる電場晶析の構築を目指す。このとき、アミノ酸水溶液とイオン液体を用いて液液界面をつくり、界面上での晶析を試みる。
 研究対象として、等電点が10.76 であり、塩基性アミノ酸のL-アルギニンを選定した。はじめに、スクリュー管瓶にL-アルギニンを5.5g 加えた後、pHが12.1の20mL 溶液となるように、各瓶に純水と水酸化ナトリウム水溶液を添加した。これを40℃で20分攪拌し完全に溶解したことを確認後、室温まで自然冷却してL-アルギニン過飽和水溶液を調整した。測定セルにイオン液体である1-Butyl 3-methylimidazolium hexafluorophosphateを3mL投入し、その上にL-アルギニン過飽和水溶液を静かに追加した。測定セルに電場を+0.5 Vで2.5 s、-0.5 Vで0.5 sを繰り返し30分間、液液界面を縦断する方向に印加した。その結果、液液界面と上層壁面に白色固体が析出した。これらをXRDにより測定したところ、いずれもL-アルギニンの結晶であることを確認した。2θ = 23°付近のピークを比較したところ、両者で強度が異なっており、結晶成長の方向性の違いが観察された。なお、界面での結晶収量は0.58 g、壁面での収量は0.53 gであった。