表題番号:2024C-147 日付:2025/06/06
研究課題β-ボリルアルデヒドへの付加反応における立体選択性の調査
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 先進理工学部 准教授 細川 誠二郎
研究成果概要

β-ボリルカルボニル化合物は、ホウ素を酸化することによりβ-ヒドロキシカルボニル化合物に変換できることから、ポリケチド合成においてボリル基を水酸基の代替基と考えられる。β-ボリルカルボニル化合物はα,β―不飽和カルボニル化合物へボリル基を共役付加することで容易に合成できることから、β-ボリルカルボニル化合物をポリケチド合成に利用すれば保護・脱保護の工程を省くことができ、短工程合成につながると考えられる。しかしながらこのような観点からβ-ボリルカルボニル化合物が研究された例はなく、β位のホウ素がカルボニル基の反応性にどのように影響するかの報告はこれまでない。本研究ではβ-ボリルアルデヒドへの付加反応における立体選択性の調査を行った。

まず、β-ボリルアルデヒドに対して細見‐櫻井反応を行った。β-ボリルアルデヒドに三塩化ホウ素存在下、アリルシランを反応させると、アリル基が付加したホウ素を含む‐酸素結合を含む五員環と推定される化合物が高い立体選択性で得られた。さらにボリル基を酸化して水酸基とすることにより、anti体のジオールが良好な収率で得られた。ここで酸化の工程では、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を使用すると良好な収率でジオールが得られることが判った。次亜塩素酸ナトリウム水溶液によるホウ素の水酸基への変換はこれまで報告が無く、これが初の例である。また、五員環中間体が得られたことから、まず三塩化ホウ素がβ位のピナコールボリル基を配位子交換によりクロロボリル基に変換し、そのβ位のホウ素にアルデヒドの酸素が配位してアルデヒドが活性化されるルイス酸リレー反応が起こっていることが推測された。また、β―ボリルアルデヒドに対する向山アルドール反応も高い立体選択性で進行し、ボリル基を酸化することによりanti体のジオールを与えた。