表題番号:2024C-143
日付:2025/10/13
研究課題可視光駆動型炭素-フッ素結合開裂反応の開発
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 理工学術院 先進理工学部 | 講師 | 太田 英介 |
(連携研究者) | 理工学術院 | 教授 | 山口潤一郎 |
- 研究成果概要
- 本研究では、最も強固な共有結合の一つであるC–F結合の切断に挑み、ジルコノセン/可視光レドックス触媒の協働による新規フッ素原子移動(Fluorine atom transfer, FAT)反応を開発した。一電子移動(SET)機構では還元が困難であったモノフッ素化化合物に対して、Zr–F結合形成の強い駆動力を利用することで、温和な条件下、選択的C–F結合開裂を実現した。本触媒系ではZr(III)種がα-フルオロカルボニル化合物からフッ素原子を引き抜くことで炭素ラジカルを生成し、続く水素原子移動もしくはアルケンへの付加を経て水素化体およびアルキル化生成物を与える。本反応の最大の特徴は、SET機構で反応性の高いトリフルオロメチル基質が不活性である一方、モノフルオロメチル基質が効率的に反応するという「化学選択性の反転」を達成した点である。さらに量子化学計算により、反応の律速段階がFATであることを明らかにした。本研究では、可視光照射下でのC–F結合開裂における新しい作動原理を提示し、フッ素化合物の選択的変換における新たな選択肢を提供した。本研究における成果はプレプリントとして発表し、現在投稿中である。また、The 11th Pacific Symposium on Radical Chemistry(PSRC-11)にて発表し、SYNLETT Poster Prizeを受賞した。