表題番号:2024C-136
日付:2025/04/21
研究課題高温 CO2吸収材の運用条件および成形体作製に関する研究
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 理工学術院 創造理工学部 | 教授 | 中垣 隆雄 |
- 研究成果概要
- 世界中で脱炭素に向けた取り組みが加速している中,2050年までのカーボンニュートラルを掲げる我が国にとって,産業部門で最大のCO₂排出源となる鉄鋼業における排出量削減が不可欠である.これに資するCO2吸収材として研究されてきたリチウムシリケート(以下LS)は,約600 °CでCO2を吸収し,800 °C程度で再生する無機固体であり,質の高い反応熱を利用できることから,高温プロセスと組み合わせたCCUに適している.本研究では再生速度式の取得,実スケール反応器の運転条件決定,材料成形法の検討を実施した.再生反応は結晶内部の核生成・成長が支配的であると考えて,Avrami-Erofeevモデルを適用し,熱重量分析の結果に対して数値計算による模擬を行った.反応速度定数はArrhenius式に従うと仮定しパラメーターフィッティングを実施した結果,複数条件下で精度良くCO2ローディングの経時変化を再現できた.取得した再生速度式と従来研究で得られた吸収速度式を,運動量・熱・物質輸送方程式と連成し,ハニカム型LSの単流路を再現したジオメトリに組み込むことで,実スケール反応器の動的特性が計算可能なスケールアップ予測モデルを構築し,運転条件の決定に使用した.再生塔に供給可能な熱量を考慮して,吸収塔入口のガス流速・温度,反応切替時間を変数としたパラメータスタディを実施した結果,現実的な敷地面積の範囲内で33.1%のCO2回収率を達成し,同時に炉頂圧発電を阻害しない圧力損失で運転可能な反応器の形状と操業条件を決定した.反応器に充填するハニカム型LSについては,セラミックコーティングと鋳型成形による作製を試み,従来の押出成形と比較して焼成時の均一な収縮が確認できた.特にセラミックコーティングによる成形は,長時間運転時に観察された細孔分散現象への対策として有力である可能性が示唆された.