表題番号:2024C-129
日付:2024/10/28
研究課題摩擦振子型免震機構を有するコンクリートブロック組積造橋脚の正負交番載荷実験
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 理工学術院 創造理工学部 | 教授 | 秋山 充良 |
- 研究成果概要
- 摩擦振子型免震機構は,振子の滑りによる地震時慣性力の低減,および滑り面の傾斜により残留変位の抑制を図る構造である.レベル2地震動に相当する地震力を受けた後でも供用性を確保できるダメージフリー構造となり得る可能性を有している.既往研究では,RC橋脚の中間部にコンクリート製の滑り面を設けることを想定し,震動実験により最適な滑り面の形状と材料の組み合わせを検討してきた.その結果,リング型の滑り面とナイロン製摩擦振子を用いた場合に高い免震効果が発揮されることを確認している.一方で,高い摩擦係数や斜面に振子が衝突する際に生じる大きな荷重により,滑り面より下部に位置する橋脚が損傷する可能性があるなど,ダメージフリー構造の実現には,一段の工夫が求められていた.本研究では,コンクリート製の下側滑り面に加え,ナイロン製の上側滑り面を摩擦振子型免震機構に設け,上下二面で異なる摩擦滑りを実現することで,一面のみを滑らせるときよりも大きな地震エネルギーを吸収できるようにした.さらに,摩擦振子型免震機構を支える橋脚をアーチ型のコンクリートブロック組積造橋脚とすることにより,滑り面から伝達される水平力に対して弾性応答する構造形態とした.ダブルリング型滑り面を有するコンクリートブロック組積造橋脚の正負交番載荷実験から,提案構造の基本的な応答性状を確認した.ダブルリング型とすることで,滑り面の与え方や摩擦係数の設定の自由度が高まり,従来よりも多様な水平荷重-水平変位関係を持つ摩擦振子型免震機構を実現できた.ただし,摩擦係数のばらつきのため,耐震性能評価の際には,この影響を考慮する必要がある.また,本研究の範囲では,アーチ形のコンクリートブロック組積造橋脚には,ひび割れ等,一切の損傷は生じておらず,摩擦振子型免震機構を支える下部工として本構造を活用することで,ダメージフリー構造を実現できる可能性が示された.