表題番号:2024C-120
日付:2025/04/03
研究課題エピタキシャル遷移金属炭化物を用いた遷移金属ダイカルコゲナイドの結晶成長
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 理工学術院 基幹理工学部 | 教授 | 乗松 航 |
- 研究成果概要
- 遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD)は、ポストシリコン半導体材料として期待されている。本研究では、炭化ケイ素(SiC)基板上にエピタキシャル成長した遷移金属炭化物(TMC)を用いて、TMDの結晶成長を行う。それにより、TMD/TMCヘテロ構造を作製し、新規物性の発現を目指している。2024年度には、SiC単結晶基板上に炭化ニオブ(NbC)をパルスレーザー堆積(PLD)法によりエピタキシャル成長させ、得られたNbC/SiC試料をSe雰囲気中で加熱することにより、TMDの一つであるNbSe2の成長を目指した。具体的にはまず、基板温度を1000℃とし、5.0x10^-5Pa程度の高真空中でPLD法によりNbC薄膜を形成した。反射高速電子回折測定、原子間力顕微鏡観察の結果、結晶性の良いNbC薄膜が形成されたことがわかった。その後、NbC/SiC試料とSe粉末を石英管に真空封入し、600および700℃で加熱することで表面へのNbSe2形成を試みた。封入するSe粉末量は1mgとした。得られた試料に対してラマン分光測定を行ったところ、いずれの温度においても、NbSe2は形成されないことがわかった。その原因を調べるためにX線光電子分光測定を行った結果、表面にSeは存在しているものの、顕著に酸化されていることがわかった。これは、表面酸化物の存在がNbSe2形成を妨げたことを示唆している。そこで今後は、還元性のある水素を含む雰囲気中でのSe化処理を行うことを予定している。また、ラマン分光測定の結果ではNbSe2の存在は確認されなかったものの、測定精度を下回るように局所的にNbSe2が形成されている可能性はある。そこで、透過型電子顕微鏡を用いた表面の観察も合わせて行っていく予定である。