表題番号:2024C-119 日付:2025/03/05
研究課題シリコン微小熱電発電デバイスの高出力化と高感度熱流センシングへの応用
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 基幹理工学部 教授 渡邉 孝信
研究成果概要

研究代表者らが開発した超高集積シリコン熱電発電デバイスのさらなる高出力化に取り組むとともに、高感度熱流センサとしての具体的な社会実装形態の検討を行った。

シリコンレグの下に空洞を設けた集積熱電デバイスを試作し、5.8℃の印加温度差で最大176mW/cm2の発電に成功した。空洞を設けることで出力は2桁近く上昇したが、空洞を設けない場合と比べて微細化限界を早く迎えることも判明した。試作デバイスではレグ長で2.5mmで出力がピークに達した。

また、外部印加温度差のうち、デバイス内の熱電レグに実際にどの程度の温度差が印加されているか明らかにするため、シリコンレグのゼーベック係数の精密測定を行った。シリコンワイヤを空洞上に空中架橋したテストデバイスを作製し、熱リークを極力排除した状態で、シリコンワイヤの熱起電力を精密計測した。測定の結果、シリコンワイヤのゼーベック係数は100nm幅で76132mV/K程度であり、幅が狭くなるほど増加する傾向がみられた。。これはワイヤ幅がせまくなるほど不純物の外方拡散が促進され、ワイヤ内部に残留する不純物濃度が低下したためと考えられる。得られたゼーベック係数から、集積熱電デバイスにおいて実際にレグ部に印加される温度差は外部印加温度差の6.78.3%であることが判明した。このことは、熱電レグ部以外の寄生熱抵抗を抑制することで、集積熱電デバイスの性能が大いに向上する余地があることを示している。

 開発した熱電デバイスを用いた高感度熱流センシングの社会実装形態として、食品や医薬品などの低温物流の安全性を確保する、バッテリーレスのスマートコンテナを考案した。食品などを収める容器が外気にさらされた際に、容器と外気との温度差によって熱電デバイスで電力を生み出し、通信を行うシステムである。実際に試作を行い、バッテリーを使用せずにセンサ情報を送することに成功した。