表題番号:2024C-118 日付:2025/03/07
研究課題ナノダイヤモンド中のNVセンターを用いた量子計測
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 基幹理工学部 教授 谷井 孝至
研究成果概要
ダイヤンモンド中のNVセンタは優れた電子スピン特性を有することから量子センシング用のセンサエレメントとして注目されている。特にナノダイヤモンドの生体適合性は細胞内計測などのバイオ応用に好適である。しかしながら,ナノダイヤモンド中のNVセンタはバルク中のそれと比較して低い電荷安定性や短いコヒーレンス時間を持ち,そのことがパルス光磁気共鳴計測(ODMR)において課題となる。今回,ナノダイヤモンドの熱処理時間を変化させた場合に,そのナノダイヤモンド中のNVセンタのスピン特性がどのように変化するのかを実験的に調べた。50~200 ppmの窒素を含有するHPHT合成ナノダイヤモンド(Element Six;平均粒径180 nm)に窒素アニール(800 ℃,2 h)を行い,ナノダイヤモンド中にNVセンタを形成した。その後,酸素アニール(465 ℃)を施した。このときのアニール時間を 2~16 hで変化させた。こうして形成したNVセンタ含有ナノダイヤモンドを石英基板表面に付着させ,Hahnエコー法により,それらが含むNVセンタのコヒーレンス時間T2を測定した。酸素アニールを施す時間が長くなるほど,HahnエコーからT2を見積もることのできるナノダイヤモンドの割合が増加した。同時に,T2の最大値も増大した。8 hの酸素アニールを施したものの中には,電子二重共鳴計測(DEER)において,ナノダイヤモンド中のP1センタに由来する明瞭なピークを取得できるものもあった。本研究では、アニールを施したナノダイヤモンドのSEM観察,Raman分光計測,XRD計測,ODMR計測を行った結果を網羅的に取得した。