表題番号:2024C-111 日付:2025/03/25
研究課題統計的最適ポートフォリオの構成に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 基幹理工学部 准教授 劉 言
研究成果概要
 マーコビッツ理論と呼ばれるリスクとリターンのバランスを最適化するための数学的フレームワークがあり、効率的な資産配分の基礎として広く認知されている。従来のリスク指標として観測データの分散が使用され、線形的な最適計算が行われるのは基本である。一方で、分散評価による線形的なポートフォリオだけではリスクヘッジが十分でないことが判明している。近年では、各資産の観測データの分位点を正確に評価し、非線形手法に基づくリスク評価がますます盛んになってきている。
 本研究では上記とは違う視点で、資産配分の割合に着目し、その割合を各資産の重要性に依存するものとして決定するものとしてモデリングを行う。各割合の時系列観測の自然母数に線形構造を導入し、疑似最尤推定量を用いたパラメータ推定を行う。このようにして、資産配分の割合に時変構造が入り、新たな資産データの観測に基づいてポートフォリオ構成を更新していく構造をもたせる研究を行った。理論面ではすでに推定手法の漸近一致性および漸近正規性を示した。数値シミュレーションでもよいパフォーマンスを得ている。研究論文は国際誌への投稿準備中である。
 また、最適ポートフォリオ構成をテーマに交流を重ねてきたシンガポール国立大学の研究者らと国際セミナーを開催した。シンガポール国立大学では研究進展が速く、既に量子統計という新視点を導入した研究ステージに入っている。そのため、従来の時系列解析と組み合わせて、量子統計と時系列の研究交流としてセミナーをした。従来の参加者に加えて、ドイツの数値計算の研究者らにも量子計算の研究状況についてお話をいただくことができた。今後は量子ポートフォリオ計算などより進んだテーマに基づく研究が盛んになっていくと思われる。
 以上のように、論文執筆や研究交流が計画通りに進んでおり、ドイツの研究者を巻き込んで予想以上に最新の研究話題に触れることができた。