表題番号:2024C-110
日付:2025/03/22
研究課題非線形拡散を伴う数理生物学モデルの定常解を取り巻く時空間ダイナミクスの解析
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 理工学術院 基幹理工学部 | 教授 | 久藤 衡介 |
(連携研究者) | 基幹理工学研究科 | 修士2年 | 加藤龍一 |
- 研究成果概要
- 非線形拡散を伴う数理生物学モデルとして、吸引型の拡散相互作用を伴う共生モデルの定常解と非定常解の関係性を研究した。これは共生関係にある2種類の生物種がそれぞれランダムに拡散することのみならず、他種の多い方向に好んで移動する傾向を模した反応拡散系モデルである。他種の多い場所に移動しようとする傾向は、吸引遷移(attractive transition)型の拡散の相互作用項でモデル化されるが、その強い非線形により数学的な研究がほとんどされていなかった。本研究課題においては、まずは時間的変化を伴わない定常解の分岐構造を得た。成果を具体的に述べると、拡散の相互作用項の効果により、空間的に一様な定常解から空間的な振動を伴う定常解が分岐する現象が起こることが示された。これは、拡散の相互作用がある程度大きく固定して、ランダム拡散係数を小さくしてくと、定数解から振動解が次々と分岐する様子が分岐図式の意味で捉えられることを意味する。また、振動解は、今度は拡散の相互作用項を増大させると、スカラーフィールド方程式の定常解に漸近することが分かった。スカラーフィールド方程式の定常解集合の構造は、定常解の個数や形状の観点から非常に豊富であることが知られており、本研究課題の成果から、吸引遷移型の拡散の相互作用は、多岐にわたる共生種の定常密度分布をもたらす可能性を示唆する。また、時間的変化を伴う非定常解の時間大域的存在と時刻無限大での漸近挙動についても一定の成果を得た。具体的には、反応項の係数が弱い共生関係にあるとき、この共生モデルの初期値境界値問題は、初期値を適当な関数空間に与えると、時間大域的な古典解をただ一つもつことが分かった。さらに、ランダム拡散係数が大きければ非定常解は定数定常解に漸近することが分かった。