表題番号:2024C-108 日付:2025/04/30
研究課題流体力学の基礎方程式の数学解析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 基幹理工学部 教授 小薗 英雄
研究成果概要
1. 定常ナビエ・ストークス方程式のテーラ・クエット・ポアズユ流に対するリュービル型定理
回転する同心円柱間の低レイノルズ数における定常ナビエ・ストークス流が軸対称であり,かつ流速がL∞ ノルムにおいて十分に小さい場合は,テーラ・クエット・ポアズユ流に限ることを明らかにした.更に流速に附随して決まる圧力が鉛直方向に有界,特に周期的な場合には,標準的なテーラ・クエット流に他ならないとこを示した.系として,2つの円柱の距離が近い場合,この様な低レイノルズ数による一意性定理と流体力学実験によって計測されるテーラー数
による流れの安定性を関連付けた.次にレイノルズ数と流速のL∞ ノルムの明示的な上限を与え,その条件下で回転する同心円柱間の流れは必然的に軸対称になることを証明した.これらの定理により同心円柱間においては,低レイノルズ数が流れの軸対称性,圧力の明示的な表示を伴ったテーラ・クエット・ポアズユ流を支配することが明らかにされた.

2. 最大正則性に基づくパラメータトリックによるナビエ・ストークス方程式の解の時空間解析性

ナビエ・ストークス方程式のスケール不変なセリンのクラスの強解は,空間変数に関して実解析的になることが

時間方向には伸長パラメータ,空間方向には平行移動パラメータを導入し,解を最大正則性に基づく陰関数定理を用いて構成することによって,その時空間の両変数に関する解析性を証明した.実際,最大正則性のクラスでこれら2つのパラメータに関して,解写像は解析的であり,そのフレッシェ微分は全単射であることから解の解析性が従う.

短所としては収束半径が明示的に得られないことではあるが,証明方法は簡素で他の半線形,準線形楕円型および放物型方程式への応用が期待できる.