表題番号:2024C-104 日付:2025/08/19
研究課題ミスト化の影響を考慮した極低温伝熱面上での3次元着霜数値解析法の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 基幹理工学部 教授 佐藤 哲也
研究成果概要

本研究では、極低温熱交換器における着霜現象を対象とし、乱流の影響やミスト生成・堆積の効果を考慮した数値解析手法を構築した。これまで申請者らは、プリクーラ(空気と液体水素を用いた極低温熱交換器)における着霜メカニズムの解明を目的として、ミストの生成・成長・沈着および昇華による霜生成を扱う数理モデルを提案してきたが、流れ場は層流として仮定されており、乱流の寄与については未解明な部分が多く残されていた。

そこで本研究では、SST k-ω乱流モデルを用いたOpenFOAMベースのCFD解析とインハウスの着霜モデルを連成し、より現実的な流動・熱・物質輸送の中での着霜挙動を予測できるよう手法を拡張した。冷却面温度–75°Cおよび–170°Cの条件下で実施した風洞実験と比較し、霜厚さ・霜質量・密度分布・ミスト挙動に関する定量的検証を行い、モデルの妥当性を検討した。

結果として、–170°Cの条件では、乱流拡散により水蒸気の供給が活発化し、後流域での昇華が霜の成長に強く寄与することが明らかになった。たとえば400秒時点では、乱流条件下の霜質量が層流条件に比べて約12.5g/m²多く、後流域の霜厚さも約1.0mm厚くなるなど、乱流の寄与が定量的に確認された。また、前縁部の霜密度は最大132kg/m³に達し、流れの剥離・再付着領域と着霜特性の関連性も得た。

一方で、霜厚さの過大予測や霜構造の変形・再凝固といった現象はモデルに未反映であり、精度向上のためには今後の改良が必要である。また、三次元的な霜成長や曲面形状への適用についても、今後検討する。

今回構築した解析手法は、極超音速機のプリクーラに加え、冷凍空調機器や液体水素関連機器など、幅広い工学システムへの応用が期待される。また、着霜現象の定量的理解と設計の高度化に資する技術的基盤として、意義のある成果を得たと考える。