表題番号:2024C-091 日付:2025/03/30
研究課題不動産法研究-不動産法講義の執筆のために
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学学術院 商学部 教授 新井 剛
研究成果概要
本研究は、不動産「所有権」・「利用権」・「担保権」を3本柱にしながら、関係する諸法令や諸制度を適切な箇所に盛り込むスタイルを採用した『不動産法概説』のテキストを完成させるために、不動産法を研究するものである。本年度は、不動産「利用権」を中心に研究をした。対象としたのは、⑴用益物権(地上権・永小作権・地役権・入会権)、⑵債権法上の利用権(使用借権・賃借権)、⑶相続法による利用権(配偶者短期居住権・配偶者居住権)である。 ⑵に関しては、債権法改正による変化とその意義について考察した。➀使用借権については、無償の使用借権が貸主側に思わぬ負担を強いていた旧法を改正する意義がある。特に、民法593条の2が、借主が借用物受取前まで、貸主が契約の解除をすることができると規定したこと、および597条(使用貸借の終了)と598条(使用貸借の解除)によって、使用貸借の終了等に関する規定が整備された点が重要である。➁賃貸借については、特に判例の立場を明文化する各種の改正がなされた(605条の2、同3、同4、613条3項等)。この改正によって、オフィスビルや賃貸マンションがヨリ投資対象となり、不動産と金融の近接化が促進されうることを指摘したい。また621条によって、賃借人の原状回復義務に関して、通常損耗・経年劣化による損傷の場合には、賃借人は責任を負わない(特別損耗の場合のみ責任あり)と明定されたことは、不動産賃貸業における実務を変容させており大変意義があることも強調しておく。 ⑶に関しては、➀配偶者短期居住権(1037条~1041条)については、判例(最判平成8・12・27民集50-10-2778)が使用貸借の成立の推認という論理によって、配偶者の遺産分割までの居住権を保護したのに対して、法律関係を明確にする意義がある。➁配偶者居住権(1028条~1036条)については、配偶者が老後の生活資金も得ながら、終身の居住権が確保される点が重要であり、その活用に期待したい。