表題番号:2024C-072 日付:2025/04/16
研究課題リュウグウ試料の化学分析によるリュウグウ母天体変成プロセスの解明
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育・総合科学学術院 教育学部 助教 中西 奈央
研究成果概要

はやぶさ2ミッションはCb型小惑星リュウグウのサンプルを地球に持ち帰り、その帰還試料初期分析により、CIコンドライトとの鉱物学的、化学的、および同位体的な類似性が明らかになった。惑星物質中の元素存在比および同位体組成の変動は、前駆体物質が天体に集積する前に経験した条件やプロセスだけでなく、集積後の天体における水質変質などの二次的なプロセスも反映している。CIコンドライトに関するこれまでの研究では、バルクの元素組成を決定するために典型的には50 mgが使用されていたが、詳細な母天体形成プロセスを議論するためには、より小さなスケールでの元素分布に焦点を当てる必要がある。本研究では、初期太陽系での物質進化の過程でリュウグウの始原物質が経験した物理化学的プロセスに関するより深い洞察を得るため、リュウグウ試料、CIコンドライトの小規模な化学的不均一性を調査した。具体的には親鉄性元素(HSE; Re, Os, Ir, Ru, Pt, Rh, Pd, and Au)、揮発性親銅性元素 (VCE; S, Ge, As, Se, and Te)、及びその他元素(Mg, Al, and Ca)の存在度測定をリュウグウ試料、CIコンドライトについて行った。1回の測定に用いたサンプル量は約1 mgである。その結果、リュウグウ、CIサンプルは、ほとんどの元素について均一な相対存在度を示す一方、親鉄性元素絶対存在度はサンプル間でバリエーションを示す(0.5-1.1xCI)ことが明らかになった。測定を行ったリュウグウ試料の表面には金属相は確認されておらず、得られた親鉄性元素の存在度は、均質な相対存在度を持つ集積物質と、その後の母天体における水質変成に対する耐性を反映している可能性があることが示唆される。