表題番号:2024C-071 日付:2025/02/18
研究課題地質時代の海水温季節変動幅解析手法の開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育・総合科学学術院 教育学部 教授 守屋 和佳
研究成果概要

 本研究では,長期間におよぶ平均的な古環境記録の媒体として利用されてきた深海底堆積物から,海水温の季節変動記録という新しい時間軸を持ったデータセットを抽出する手法の開発を目指す.具体的には,堆積物に保存された浮遊性有孔虫化石の酸素同位体比(δ18O)を1個体毎に分析し,δ18Oの最大値・最小値から,海水温の最低値・最高値,すなわち冬・夏の水温を算出する.

 統合国際深海掘削計画によって採取された海底堆積物から抽出された浮遊性有孔虫3種を対象として,各種の1個体ごとの殻体の酸素同位体比分析を行った.水柱中の水温躍層以深に生息する種については,1個体ごとの酸素同位体比が示す分布が小さく,年間の水温変動幅が小さいことが反映されていることを確認した.混合層中に生息する2種については,1個体ごとの酸素同位体比の示す分布が小さく中央値が低い種と,1個体ごとの分布が大きく中央値が低い種が確認された.前者は主として高水温期に繁殖し,後者は年間を通じて繁殖する種であると想定される.

 このように,浮遊性有孔虫1個体ごとの酸素同位体比を分析し,その中央値と分布を比較することで,より詳細な海水温情報が得られることを確認した.