表題番号:2024C-068 日付:2025/02/04
研究課題人民党期ルイージ・ストゥルツォにおける政治的自律と宗教的権威の相剋
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育・総合科学学術院 教育学部 准教授 千野 貴裕
研究成果概要

教会の指導に対する服従の義務をもつカトリック教徒にとって、教会の指導から自律し、自己の政治的判断を行うことはいかに可能だろうか。この問いを真剣に考えた20世紀イタリアの聖職者・思想家にルイージ・ストゥルツォがいる。この問いは、ファシスト政府の下で人民党が解党されたことで、イタリア国内政治の次元において失敗したと一般に理解されているものの、彼自身がどのような企図をもって、人民党を創設し、政治的危機時代のイタリアにおいて活動したかは詳らかになっていない。そこで本研究は、彼が創設者となったイタリア人民党期に、彼がどのようにこの問題に取り組んだかを研究することを目的とした。現段階では、この問いに十全な応答をするに至っていない。しかし、ストゥルツォの企図が、グラムシやサルヴェーミニといった、当時のイタリアの主要な思想家たちに、驚くほど理解されておらず、もっぱら「カトリックの世俗化」という(ストゥルツォの企図から見れば)誤解された文脈で処理されてしまっていることがわかった。同時代におけるこの認識のギャップ自体が、当時の思想家たちの興味深い特質を示していることがわかった点は、当初に予期していなかった興味深い収穫であった。本研究の成果は、現在、英文主要ジャーナルへの投稿準備中である。