表題番号:2024C-067
日付:2025/03/11
研究課題アーチの形状に見るフランボワイヤン式ゴシック建築の歴史的研究
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 教育・総合科学学術院 教育学部 | 教授 | 堀越 宏一 |
- 研究成果概要
- 15~16世紀に発達したフランボワイヤン・ゴシック式建築に関しては、ゴシック式の亜流という位置づけが与えられ、その建築史的独自性が語られることは少ない。本研究では、当時の建物の窓や戸口の上辺を飾る「宝珠状曲線装飾」(アーチの中央が宝珠の先端のように上方に尖った形状)に注目することによって、フランボワイヤン・ゴシック式建築の建築史的位置づけを、石造建築のみならず木造の町家建築についても明らかにすることを考えた。10年来、中世フランスの町家を調査するなかで、この宝珠状曲線装飾がフランボワイヤン・ゴシック式建築に由来するものであることを知った。このことを出発点として、本研究では、次のような2つの点を明らかにすることを構想した。第一に、宝珠状曲線装飾が契機となって、フランボワイヤン・ゴシック式建築のもう一つの特徴である偏円アーチが生み出されたと推定される。ゴシック式の尖頭アーチに比べて、アーチ全体の高さを低く抑えることのできる偏円アーチは、その後の石造アーチの主流となったという点で建築史的に重要である。宝珠状曲線装飾は、これまで議論されることの少なかった偏円アーチの起源について考察する手掛かりを与えてくれる。第二に、15~16世紀のハーフティンバー式木造町家(土台は石造で、1階以上は木骨真壁工法)の木造窓枠上辺にも、宝珠状曲線装飾が用いられていることから、この宝珠状曲線装飾を手掛かりに、石造と木造双方に、フランボワイヤン式という共通性が見られることを明らかにすることができる。これらの仮説を、15~16世紀の石造のフランボワイヤン・ゴシック式建築とハーフティンバー式木造町家が数多く残されているブルターニュ地方とノルマンディー地方をフィールドとして実証することを目指した。