表題番号:2024C-066 日付:2025/09/07
研究課題都市の「スポンジ化」に関する要因と対策に関する地理学的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育・総合科学学術院 教育学部 教授 箸本 健二
研究成果概要
 本研究では,都市のスポンジ化の誘因として大きな影響を持つ中心市街地からの大型店撤退に注目し,①業態別,売場面積別での撤退状況,②大型店撤退が地域に与えた影響,③跡地・後施設の利活用実態,④地方自治体の政策的対応などを把握するとともに,前回調査との比較を交えた分析を行った。今回調査(2025年2月実施)は,前回と同じく1995年現在で人口規模2万人以上(1995年時点での政令市を除く)であった857市町を対象とする郵送留置方式で実施し,551市町より有効回答を得た(回収率64.3%)。
 分析結果は以下の3点に集約できる。第1に2012年以降も中心市街地からの大型店撤退は継続している。その背景として,業績不振など個店の経営状況による閉店(個店要素)に加え,百貨店やGMSなど全国資本の店舗網再編・縮小による閉店(企業判断)が増えつつある。前者による撤退事例は地方都市圏,後者による撤退事例は大都市圏に多い。
 第2に,跡地・後施設の利活用では,何らかの形で商業施設を残す再生が全体の7割超を占める。しかし,再生後の商業床面積は閉店時の面積に対して平均で約22%減少している。また,除却後に再建された施設では,オフィスや集合住宅など非商業利用の比率が増えており,中心市街地に求められる機能の多様化がうかがえる。
 第3に,上述した多様化を背景として,大型店の撤退を「悪影響」と捉える地方自治体の割合は減少しており,オフィス,住宅のほか,防災施設,文化・文教施設,病院・クリニックなど,多様な機能を併せ持つ複合型施設への再生をめざす事例が増加している。他方,商業機能としての跡地・後施設の再生をめざす政策的対応は減少傾向を示している。
 その一方で中心市街地の商業核は「コンパクトなまちづくり」をめざす上で必須の要素となる。郊外部あるいは近隣都市の集積との競合を念頭に置きつつ,どのように商業核を維持するかが,都市のスポンジ化を抑制する上での課題となる。