表題番号:2024C-050 日付:2024/11/13
研究課題21世紀の西東詩集 アン・コッテンの日本詩を解読する試み
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 文学部 教授 山本 浩司
研究成果概要

本プロジェクトの研究対象であるアン・コッテンとは、数年前にオーストリア大使館が彼女を招聘した際に、早稲田大学でワークショップを主催して知己を得ていたが、2024年度夏学期にベルリン自由大学のフランク講師の主催するゼミナールに彼女が招聘された時に、再会を果たし、彼女の漢字を取り込む詩のプロジェクト(以下、「漢字詩P」)について個人的に見解を聞くことができた。6月から9月にかけては、マルバッハのドイツ文学資料館やドイツ国立図書館フランクフルト館にて、フェノロサやエズラ・パウンド、小泉八雲などの先行する試みを含めて関連資料を収集し、詩人自身ともメールを通じてコンタクトを保った。この結果、この領域の先駆者であるエズラ・パウンドとの違いを意識するためには、特に彼女の様々な詩の翻訳プロジェクト(英独Rosmarie Waldrop, 独英Volker Braun など)を考察の対象に含まなければならないと気づくことができた。そして現代ドイツ詩の多言語性とのコンテクストに置いた上で、コッテンの「漢字詩P」を検討していく方向性が定まった。

11月までにインプットは十分に果たしたので、今後数ヶ月かけてそれを消化して、20257月にグラーツ大学で開催されるIVG(国際ドイツ文学会)における口頭発表(査読承認済み)「"die deutsche Sprache zu formen nach der chinesischen und japanischen Sprache". Zum dichterischen Verfahren in Ann Cottens Japanbuch "Jikiketsugaki Tsurezuregusa"(「ドイツ語を中国語と日本語に従って形作る」―アン・コッテンの日本書『食血餓鬼徒然草』の詩的方法について」)の準備を進める。2024年度は特別研究期間を取得してベルリン、フンボルト大学に客員研究員として滞在している地の利を生かして、大学院コロキウムなどを活用して構想発表して、ドイツの専門家たちの意見を取り込みつつ、発表を国際的なレベルに引き上げるよう努めるつもりである。