表題番号:2024C-041
日付:2025/02/04
研究課題ウェルビーイングの個人差に関する検討
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 文学学術院 文化構想学部 | 教授 | 小塩 真司 |
- 研究成果概要
- 本年度は,広くウェルビーイングに関する調査や考察を深めることを目的とした。ウェルビーイングは単一の概念ではなく,単なる健康や幸福を超えた,広い概念である。ウェルビーイングは,心身の健康,社会的な関係の良好さ,経済的な安定,人生の目的意識や意義を認識することなど,広く生活や人生そのものが良好な状態にあることを意味する。今年度はまず,ダークなパーソナリティ(マキャベリアニズム,ナルシシズム,サイコパシー,サディズム)とウェルビーイングに関してレビューを行い,書籍のなかに含めた。ダーク・パーソナリティとウェルビーイングとの関係は単純なものではなく,ネガティブな関係とポジティブな関係の両面を持つ。たとえば,ダークなパーソナリティの持ち主は他者を操作しようとしたり孤立したりする傾向があることから,社会的な関係性の側面におけるウェルビーイングは低下しやすい。しかし一方で,高い自己肯定感を持つナルシシズムや,ダークなパーソナリティの持ち主の特徴である達成志向や社会的地位の希求が成功した場合には,ウェルビーイングの高さにもつながると考えられる。また,認知能力や非認知能力と呼ばれる心理的な特性に注目した際には,ウェルビーイングはアウトカムとして用いられることが多い。認知能力であれ,学力や知能ではない心理的な特徴である非認知能力は,ウェルビーイングのような「良い結果」をそもそも予測することによって,「よい心理的な特徴」として理解されるという枠組みがある。さらに,ウェルビーイングに類似した概念として首尾一貫感覚(SOC)がある。これは,ストレスに対処し健康を維持するための心理的資源として考えられている概念である。首尾一貫感覚型かければ,ストレスにうまく対処することが可能となり,社会的支援を得ることも可能になることから,ウェルビーイングの高さにもつながると予想される。これらはいずれも文献のレビューとして研究業績になったものである。今後は,これらのレビューのなかで見出された知見に基づいて,実証的に研究を進めていく。