表題番号:2024C-028
日付:2024/11/07
研究課題弁護士懲戒制度の機能転換へ向けて
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 法学学術院 大学院法務研究科 | 教授 | 和田 仁孝 |
(連携研究者) | 法務研究科 | 教授 | 和田仁孝 |
- 研究成果概要
弁護士懲戒制度は弁護士自治の根幹をなす制度のひとつである。弁護士が自浄作用をもってその成員の行動規律を図ることは、公的使命を帯びた弁護士という職業にあって不可欠の重要性を持っている。しかるに、社会的環境の変化の中で、そうした機能に逆機能的な状況が生じてきていることも否定できない。
弁護士懲戒委員会の委員としての参与観察から、以下のような問題点について検討した、第1に、受任した職務を放置する事案が、近年、顕著に増加いており、その背景に弁護士自身のメンタルヘルスの問題が潜んでいる場合が多いが、こうした事案は懲戒することよりも、問題を早期に把握し弁護士会としての適切な支援を提供しうるシステムの構築が必要である。わが国にはそうしたシステムは存在しないが、比較対象としてAmerican Bar Association の状況を検討した。アメリカでは、全米50州すべてに弁護士(週により裁判官も含む)を対象とする、Assistance Programが整備されており、24時間いつでも、相談できる体制を弁護士会内部に設置している。国内でのインタビュー調査により、東京にもならず少なからぬ地域で同様の傾向が見られ、懲戒処分を与える事後対応的処置とは異なる、アメリカのような早期対応システムの設置は弁護士のため、ひいては利用者のためにも必要であると思われる(なお11月に米国での補充調査もよちぇいしている)。
懲戒制度も、ただ懲罰的機能に専心するだけの現在のシステムから、弁護士の業務の適正化のための支援機能をも担う新たな支援・教育型懲戒制度への転換を考えていく必要があると思われる。なお、本研究は、早稲田大学特定課題研究の支援のほか、民事紛争処理研究基金からの支援も受けることができた。