表題番号:2024C-022 日付:2025/02/20
研究課題法的人間像に関する日仏比較研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学学術院 法学部 教授 山城 一真
研究成果概要
 民法学説においては、既存の体系に取り込むことができない法的規律が現れたとき、その理論的基盤を明らかにするために人間像が問い直されることが少なくない。こうした問題は、21世紀初頭においては、成年後見法と消費者契約法をめぐって盛んに論じられたが、現在、まさにこれらの領域の革新が再び論じられるようになり、それに伴って、法的人間像のあり方も問い直されている。
 以上の認識に基づき、本計画に基づく研究として、研究者は、法的人間像を扱う主要な論稿を分析したうえで、その成果を踏まえつつ、成年後見法と消費者契約法につき、後掲の各研究報告を行った(一部、年度内に行う予定であるものの未実施のものを含む)。以上において、人を、即自的に存在するものとしてでなく、他者との関係において「他のようでもあり得る」存在として捉えることが求められているのではないかとの知見を得た。
 本研究の成果は、そのすべてが法的人間像を主題的に論じるものではない。しかし、それら各領域において、人間の意思形成の状況依存性をいかに扱うかという問題が表出していることが確認された。そうした状況は、成年後見法の分野においては、立法論議において保護の個別化が志向される際に絶えず念頭に置かれており、消費者契約法の分野においては、取引のデジタル化の進展に伴う勧誘・広告規制の変容に顕著に現れている。各領域における問題の現れ方には、もちろん、領域の特性に応じた偏差がみられる。しかし、それらの背後には、人間の「意思決定」のありようが、法律概念としての「意思」との間に齟齬を来しているという共通の認識がみられる。
 次年度以降においては、「意思決定」のありように焦点を当てた研究を遂行することが、中期的な課題となる。