表題番号:2024C-006 日付:2025/03/07
研究課題米国におけるメキシコ移民の政治的社会化の世代間比較
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学術院 政治経済学部 准教授 高橋 百合子
研究成果概要
 本研究課題は、在米メキシコ移民の政治的社会化の過程が、移民第1、第2、第3世代間でどのように異なるのか、独自のサーベイを実施することによって明らかにすることを目指すものである。メキシコ系移民は、米国社会で存在感を増すラテン系移民の半数を占める。しかし、メキシコ生まれの移民第1世代、米国生まれでメキシコ国籍の親を持つ移民第3世代、自身も親も米国生まれの移民第3世代の間で、移民としてのアイデンティティ、そしてそれが政治的社会化へ与える影響については、体系的に研究がなされてこなかった。
 今年度は、2024年9月に、シカゴ市のデュポール大学の学生を対象に、昨年度に実施した調査の補足的調査を行った。特に、移民第2世代に焦点を絞り、フォーカス・グループ調査を実施した。暫定的な結果として、①政治的態度形成において、家族および同じラテン系の友人の影響が大きいこと、②ラティーノ・アイデンティティを持ち、政治参加に関心があること、③社会的不公正意識が高いことなどが分かった。
 また調査の過程で、第1に、移民第1世代の政治的社会化の背景としては、「どのように米国へ移民したか(非正規・正規)」の違いが大きな影響を与えていることが明らかになった。第2に、移民第2世代の場合、現政権の政策選好・イデオロギーに対して、支持派・反対派に分断していることも明らかになった。第3に、移民の政治的社会化は、移民本人に関する個人的要因(当初の仮説)の他に、移民を取り巻く政治経済といった環境要因に大きく規定され、さらに後者は、政治的要因(安全保障など、選挙時の主要な政策争点)および経済的要因(関税を外交手段とする通商問題)にも規定されることを学んだ。
 2月に開催した国際シンポジウムに、安全保障、通商問題の専門家をメキシコから招聘し、新たな問題に対する理解を深めることができた。