表題番号:2024C-003 日付:2025/03/31
研究課題外国語と日本語の話し言葉におけるパラ言語情報と音声特徴およびその習得
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学術院 政治経済学部 教授 生駒 美喜
(連携研究者) ドイツ・フンボルト大学 専任講師 Zobel, Sarah
(連携研究者) 神戸大学 特命助教 小西隆之
研究成果概要
音声コミュニケーションを円滑に行うためには、話者の聞き手に対する発話態度や意図的な感情、すなわち「パラ言語情報」(森他, 2014)を正しく相手に伝え、理解することが大変重要である。パラ言語情報は、日本語の話しことばにおいて終助詞と共に伝えられるとされ、ドイツ語においても類似した機能を持つja, doch, denn, schonなどの心態詞が日常会話において多く用いられる。終助詞や心態詞は、状況によって異なった発話態度・意図を示す。
本研究では、今までの研究成果をふまえ、ドイツ語心態詞schonに着目して引き続き分析を行った。ドイツ語心態詞schon は「留保」および「反論」の意図を示す場合、アクセントが置かれる場合もあるとされる(Ikoma 2008)。そこで「留保」および「反論」のschonを対象に、(a) schonが文末に位置、(b) schonが文中に位置し、schonの後ろに2音節、(c)schonが文中に位置し、schonの後ろに4音節が位置、の3つのschonの位置のパターンを持つ短文を資料としてドイツ語母語話者による発話と知覚の実験を実施した。
発話実験の結果、「留保」と「反論」の状況下において、schonにはアクセントが置かれるケースが多くみられた。この結果は、これまでに行ってきた実験結果とは異なっている。今回の資料では、「留保」および「反論」の状況文を作成する際、他の状況(例えば「確信」)とは区別されるような状況を用いており、この点が影響しているものと考えられる。但し、「留保」の状況においては、(a)のschonが文末に位置している文パターンにおいて、動詞にも副次的アクセントが置かれているケースが多くみられた。このことから、音韻・音声的な要因がschonの音声特徴にも影響を及ぼす可能性が示唆される。また知覚実験の結果、「反論」と知覚されたアクセントの置かれるschonの母音部分のF1とF2の値が「留保」と比較して有意に高いことが明らかになった。