表題番号:2023R-052 日付:2024/02/13
研究課題標的タンパク質分解誘導(PROTAC)技術を応用した老化病態制御の試みとその検
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 人間科学部 教授 千葉 卓哉
研究成果概要

【背景】

近年、我が国の健康寿命と平均寿命との差は男性で8.73年、女性で12.07年であり、健康寿命を伸ばし平均寿命との差を縮めることは、人々のQOLの向上につながるため、現代社会の重要課題となっている。健康寿命の短縮要因として問題視されているのが肥満であり、高齢化と肥満人口の増加によって今後、非アルコール性脂肪肝炎(non-alcoholic steatohepatitis :NASH)の患者数がさらに増加すると予測されている。しかし、現時点で有効な治療薬が存在していないことから、治療標的の同定と治療薬の開発が課題となっている。本研究は全身的なWDR6遺伝子の欠損がNASH病態の進行にどのように影響を与えるのかについて検討することを目的とする。

【方法】

野生型のマウスWT群(13匹)、WDR6遺伝子をヘテロ欠損させたHT群(13匹)、WDR6遺伝子をホモ欠損させたKO群(13匹)計39匹を、8週齢から通常飼料 CRF-1を与える群(各5匹)とNASH病態を誘導するコリン欠乏メチオニン減量超高脂肪飼料(CDAHFD)を与える群(各8匹)の計6群に分けて飼育し、5.5週間後に臓器採取を行った。HE染色とSR染色により、肝臓での病態進行についての組織学的評価を行った。血漿TG, TC濃度およびAST, ALT濃度を測定した。

【結果と考察】

CDAHFD3群について、肝臓重量はWT群に比べてKO群が有意に低値を示し、体重、精巣上体周囲脂肪重量、鼠径部皮下脂肪重量はWTHT群に比べてKO群が有意に低値を示したことから、KO群で脂質蓄積が抑制された可能性が考えられる。血漿TG, TC濃度についてもHT群と比べてKO群が有意に低値を示したがWT群とHT群の間に有意差は認められず、予想に反してHT群とKO群のみで有意差が認められた。血漿AST, ALT濃度はWTHT群に比べKO群で低い傾向がみられたため、KO群で肝細胞障害が抑えられた可能性が示唆された。