表題番号:2023R-051 日付:2023/11/03
研究課題プライバシー保護実用化のための新演算方式への挑戦
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 基幹理工学部 教授 山名 早人
研究成果概要


本研究は、個人情報、プライバシー問題を解決する技術として、データを暗号化し暗号のままあらゆる処理を可能とする技術である準同型暗号の実用化を目指したものである。準同型暗号では加算と乗算のみがサポートされるため、複雑な計算(例えば平方根や除算など)を実行することができない。これに対して、本研究ではテーブルに予め関数の入力と出力の対応を保存しておき、入力された値(暗号化済)に対する出力(暗号化済)を求める手法の研究(ルックアップテーブル方式(LUT)と予備)を進めた。これにより任意の演算を実現することが可能となる。

従来提案されているLUTは、ビットレベルで実現されており、ビット数をNとすると2Nオーダの時間が必要となる。これに対し提案手法では、ワードレベルの準同型暗号を用いることで高速化を狙った。一方、ワードレベルでのLUTの従来研究では、「入力として取り得る値の範囲が暗号文の空間の2倍までに限定されるといった問題」や「関数への入力数が限定されるという問題」により、汎用的な演算を実現できない。これに対して、提案手法では、任意の入力数を持つ関数、かつ、各入力の値が取り得る範囲を限定しない汎用的な手法を目指した。

Microsoft SEALライブラリのBFVスキームを利用した実証実験により、(1)1入力12ビット関数を0.14秒、(2)1入力18ビット関数を2.53秒、(3)2入力6ビット関数を0.17秒、(4)3入力4ビット関数を0.20秒で実現することに成功した。さらに、機械学習で頻繁に用いられる活性化関数であるSwishをインプリメントし、既存手法に対して1.2倍の高速化を確認すると共に、ReLUでは、1.9倍の高速化を達成した。