表題番号:2023R-043 日付:2024/04/03
研究課題宇宙線による古墳の透視を題材とした高校生の学際的探究活動コラボレーション
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 本庄高等学院 教諭 大塚 未来
研究成果概要
 昨今、文理融合・横断領域の研究分野において意義深い学術研究がなされており、今後もその重要度は大きくなっていくと考えられる。特に、宇宙線による遺跡の内部構造の解明は、物理学・考古学両領域にインパクトを与えた。宇宙線透視技術は原発の内部透視や津波の測定など社会的な意義も大きく、今後も広がりのある発展が期待される技術である。また、遺跡の宇宙線透視は、その学際性から、多角的、複合的に事象を捉え組み合わせる力を要し、理数探究のテーマとしても適した題材であると考えられる。そこで、本研究は古墳のミュオグラフィという素粒子物理学と考古学の融合領域を題材とし、高校生による学際研究を実践するための学習プログラム、教材開発、コラボレーションの構築を目的としている。本庄高等学院では、2020年から早稲田大学の考古資料館や本庄早稲田の杜ミュージアム、大阪大学、高エネルギー加速器研究機構、総合研究大学院大学、名古屋大学、山形大学の科学者や大学院生と連携して、高校生による宇宙線の透視プロジェクト「墳Q」活動を実施している。これまで、古墳の測定、日本地球惑星科学連合大会や日本考古学協会の高校生セッションでのポスター発表を行ってきた。本年度における主な活動と成果は以下のとおりである。

・秋山庚申塚古墳での宇宙線測定
 2023年8月9,10日に、本庄市の秋山庚申塚古墳の2回目の宇宙線測定を行った。
測定には教育アウトリーチ用に開発された宇宙線測定装置OSECHI(Outreach & Science Education Cosmic-ray Hunting Instrument)を用いた。尚、この活動は山形大のウェブページ(https://www.sci.yamagata-u.ac.jp/news/detail/1070/)においても取り上げられている。
https://www.waseda.jp/school/honjo/news/4220

・Belle2実験ワークショップの開催
 2024年3月21日に、本庄高等学院においてつくばにあるSuperKEKB加速器でのBelle2実験のデータ解析ワークショップを行った。アメリカの素粒子物理学教育推進のための機関である QuarkNet スタッフであるKenneth Cecire 氏(ノートルダム大学)を招聘し、生徒たちはBelle2実験や標準模型素粒子ついての入門講義やいくつかの素粒子物理を題材としたワークの後に、Belle2実験のデータ解析を体験した。22日にはつくばでのBelle2実験現場のオンラインツアーも行った。
https://www.waseda.jp/school/honjo/news/5289

・本庄キャンパス内の建物の宇宙線透視
 2024年3月28日から29日にかけて、本庄高等学院生対象のサイエンス合宿を行い、物理パートとしてキャンパス内にあるセミナーハウスの建物の構造の宇宙線透視を行った。学院生は、シンチレータ検出器をもちいて、セミナーハウス内のさまざまな地点に飛来するμ粒子の量の測定を行い、建物の断面の構造の図を作成した。
https://www.waseda.jp/school/honjo/news/5252

・国際会議における活動の敷衍
 名古屋大学で行われたthe 38th International Cosmic Ray Conference (ICRC2023)のOutreach & Educationセッションにおいて活動の報告を行い、成果の敷衍、国際的に科学アウトリーチ活動を行っている研究者とのコミュニケーションを行った。