表題番号:2023R-034 日付:2024/04/03
研究課題食欲調節機構からみた加齢性食欲不振に対する習慣的な身体活動の役割の解明
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) スポーツ科学学術院 スポーツ科学部 教授 宮下 政司
研究成果概要

目的: 20代の若年男性を対象に、規定食に対する食欲調節ホルモンの分泌量および食物報酬の反応の違いを、習慣的な身体活動が活動的な人と非活動的な人とで比較することを目的とした。

方法: 研究デザインは横断的研究とし、20名の健常な若年男性を対象に実施した。対象者は、日常生活下で活動量計を2週間にわたり装着した。活動量計によるデータを用い、先行研究の結果をもとに群分けを行った。最終的に、解析可能な全データを持つ17名の対象者のデータを使用した。対象者は、活動群(6; 中強度以上の身体活動:52.3 ± 22.3/)または、非活動群(11; 中強度以上の身体活動:36.9 ± 12.2/)に分けられた。本試験は、実験室にて行われた。対象者は、一晩の絶食後に来研し、体重当たりで調整された規定食(エネルギー: 12.2 kcal/kg、炭水化物: 57%、脂質: 25%、タンパク質: 18%)を摂取した。採血で得られた血漿から食欲調節ホルモンとして活性型グレリンとペプチドYYPYY)濃度を測定した。採血は、空腹時、食後306090120150分に実施した。食物報酬は、日本語版Leeds Food Preference Questionnaireを用いて評価した。評価項目は、脂質エネルギー比の異なる食品に対する、1) 意識的な好み、2) 意識的な欲求、3) 無意識的な欲求の計3項目とした。食物報酬の評価は、規定食摂取の前後に行われた。

結果: 空腹時の活性型グレリン濃度は、活動群と比較して、非活動群で高値を示した(p = 0.037)。活性型グレリンにおける群と時間の交互作用について、食後3060120分の濃度は、活動群よりも非活動群の方が高値を示した(全て、p ≤ 0.039)PYY濃度について、群間に差は認めらなかった(p ≥ 0.05)。食物報酬について、全ての項目において群間に差は認められなかった(全て、p ≥ 0.05)

結論: 本研究により、若年男性における身体活動の状況が食欲亢進ホルモンの分泌に影響を与えることが観察された。この結果は、身体活動の低下が食欲の亢進を引き起こす可能性があることを示唆している。また、本研究では高齢者も対象に含める予定であったが、報告可能なレベルのデータ収集が完了していないため(n = 7)、今回の報告では高齢者のデータは含めていない。今後は残りの若年者および高齢者のデータ収集に努め、年代を踏まえた分析を行う予定である。